水底ガムシロップ

世の中わかんないことばっかりだ

【SideM】葛之葉雨彦は”掃除屋”になり、”アイドル”になった

見ましたか皆さん、見てないですかじゃあ話だけでも聞いて下さい。

かつて北村想楽と古論クリスという目に見えた問題児の影に隠れていた最後の特大問題児、葛之葉雨彦のSideMemoriesが去る11/30に公開されました。

これがまあ私が雨彦Pだからという色眼鏡を以てしてもとんでもない代物だったという話です。

 

※雨彦のSideMemoriesの話をします。ネタバレへの配慮はありません。

 

 

■掃除屋は掃除屋兼アイドルになった

雨彦は何の為に315プロの新アイドル発掘オーディションに応募したのか?

芸能界の掃除をするためである。

アイドルになって間もない【2ndSTAGE】のカードではおどけたように「いっそのこと、こっちを本道にしちまおうか」と言った。

掃除屋が本道、アイドルはその手段であると。

 

そこからアニバまでの変化は拙記事「葛之葉雨彦は問題児である」とかそのへんに書いておいた内容とまるかぶりするので省く。

ジャズを切っ掛けに芽吹いてきた「自分はどうあるべきなのか」という疑問をアニバーサリーライブでついに「アイドルとして」掃除を続けることを胸の内で語った。

ただの手段として見ていたはずのアイドルに煌きを見出し、情熱を燃やす事を決意したのだ。

 

ここを境に雨彦は段々と変化している。

それはツナギを着る回数が目に見えて減っていたり、それまで一度たりとももらえていなかった越境SRをもらったり、冬美旬や榊夏来に対して最年長らしいアドバイスや介入を見せたり、本当に様々だ。

それは315プロのあるモバ世界だけでなく、2019年8月末のさいたまスーパーアリーナで初めてアウェイのライブに315プロ代表としてTHE虎牙道・ダブルセンターである輝と冬馬と共に殴り込みに行ったり、

同じく2019年10月には315プロ代表、ワートレフランスの括りでユニットではない一人として東京ドームに立ったりと、私たちの世界においても目覚ましい躍進があった。

更に2020年3月、実にSymphonic Brave以来となるLegendersの新曲も出た。

Make New Legendは「シンブレが作られた世界線」たる私たちの世界と「そうではない(これはシンブレが2ndのカーテンコールの笠間さんのお話がきっかけで作られた、という作詞家の方のツイートを元にしただけの話です)世界線」たる315プロのあるモバ世界どちらでも通用する非常に強い楽曲だと私は感じていた。

 

Legendersの未来やアイドルに真剣になった雨彦の活躍に思いを馳せる中、今回SideMemoriesで取り上げられたのは雨彦にとって運命の分かれ道ともなり得るテーマだった。

 

つまり雨彦は掃除屋とアイドル、どちらを選ぶのか?という命題である。

 

 

■掃除屋兼アイドルは掃除屋になり、そしてアイドルになった

 

 

雨彦の事をよく見た事のある人なら誰しも思ったことがあるだろう。

「彼はいつか本道である掃除屋に専念すべく、アイドルを辞めてしまうのではないか」と。

それはそうだ。だって彼にとってアイドルは最初「掃除の為の手段」でしかなかった。

多分「アイドルを手段として利用している」事に不服を覚えるユーザーもいたと思う。

それに対してはあまりフォローしようとは思わない。だってほんとだし。

彼は良くも悪くも入れ込まないというか、執着と欲を持たない人間だ。

それはSideMemoriesでも語られた通り、「自分を律してきた」からなのだろう。

掃除屋として、特殊清掃やオカルトじみた所業を為さねばならぬ運命に対し自己を抑え込む…むしろ、自己を殺し続けてきた男は、いつの間にか物事や他人に対しても慈しみこそあれ執着や欲のような人間らしい感情がそれを生み出す回路ごと抜け落ちてしまったんだと思う。

このあたりの考え事は拙記事「葛之葉雨彦と陰陽師と特殊清掃」に大体載せて泣いてきたので詳細は省く。

 

その男がSideMemoriesで「掃除の最中にアイドルの仕事の事を考えている」自分に気が付き、おそらく初めて自分の気持ちに向き合い、考えるシーンが第四話にある。

ここの描写が本当に文章だけにして非常に緻密で私はめちゃくちゃ唸った。

最初のポスターを見る流れは初イベントであるチェスのイベントストーリー内であった雨彦が一人で抜け出し掃除に向かうシーンと重なるし、

「掃除の最中についアイドルの仕事を考える」のは今やあまたの雨彦の変化の切っ掛けになっているジャズの二枚目台詞「掃除中、ハタキでリズムを取りそうになった。デッキブラシやホウキやハタキでリズムを奏でるのも、面白そうだ。」と重なる。

(これはジャズイベ当時二枚長チケから呼べなかったのでごく最近知ったしやっぱSideMemoriesでやるのめちゃくちゃ上手いな!!!と思った)

 

そして自分の見知らぬ変化に気が付いてから、その気持ちに対して疑問を投げかける雨彦のモノローグがほ~~~~~~んとに良かったんです!!!!!

「(俺は…いつの間にここまで変わっていたんだろうか…?)」と考えている時の雨彦の表情はきっと触ったら消えそうなくらい弱くて綺麗なんだろうなあと思いました。

 

 

そして7話で、彼はプロデューサーに自身の揺らぎを打ち明ける。「とある男のお話」というバレバレの例えを添えて。

掃除と同じくらい大切なものができてしまった。今まで掃除しかしてこなかった自分はどうしたらいいのかわからない、と。

 

プロデューサーは答えてくれた。

「大事なものは、いくつあってもいい」と。

 

掃除屋という宿業を背負い端から見れば異端とも言えるほど「自己」を殺してきた男に

アイドルマスターSideMの世界と315プロのプロデューサーはアイドルという職業を与え、なおかつ「掃除屋もアイドルも大切なもので、優劣なんてつけられない、それでいい。大事なものは、いくつあってもいい。全部同じだけ大切にしてやり遂げたいという欲深さを、貴方は持っていい」と言ってくれたのだ。

 

人として当たり前の事を捨てだれかの汚れを清める事を生き甲斐としてきた男に、

30になって未知であった輝きと「欲」が芽生え戸惑う男に、

どちらも素敵なものだね、どっちも頑張っちゃえよと、SideMは祝福してくれた。

 

 

こんなに、

こんなに、素晴らしい事があるだろうか。

 

 

 

私がこの話でもうひとつ痛感したのが、雨彦は掃除屋稼業に身をやつしてきた自分をひとかけらも恥じていないし、後悔もしていないという事だ。すがすがしいまでにまっすぐ掃除にも向き合っているし、同じくらいまっすぐアイドルとして向き合っている。外野が彼の境遇や生い立ちを憐れんだり悲しむのは、お門違いだったのだ。衝撃だった。

 

きっと雨彦は掃除屋としての情熱も、アイドルとしての情熱も併せ持ってこれからの人生に臨んでいく。自分の限界を今まで抜け落ちたままだった「欲」という最も原始的かつ強い力で吹き飛ばした彼がどんな仕事を私たちに見せてくれるのか、本当に楽しみだ。 

 

■(閑話1)モバの雨彦はシンブレは歌えるようになった?

なった、と思う。

私はてっきりアニバで歌えるようになるのかと思っていたらいまいち確信が持てなくて、それじゃあいつなんだと悶々としていたのだが、多分このタイミングだと思う。クリスが海外ウェディング、想楽がジャズ切っ掛けだったと勝手に思っているので随分長くかかってしまったけれど、ユニットではなく個人とPのやり取りが最後の後押しになるのもまた彼らしい。

 

■(閑話2)SideMemoriesの時期まで計算されていたんじゃなかろうか

 

と、思う。

それはこの話が雨彦にとってアニバ上位並みかそれ以上の転機になっているからだけれども、アニバ直後でもWDSRでも、「お前さんにもまだ話していない事がある」と突然言われたシャドウ9でもなく花火大会の後しばらく開いたこの機こそにと用意されていたのだとしか思えない。

 

 

■終わりに

 

これを書いている今まさに、雨彦はアイマス全体で行われている都道府県フェアに奈良の代表として選抜されている。事務所越境自体がSideMは最近やっと機に恵まれるようになってきた中でもLegenders初の快挙となる。天井擦りそうなパネル見に行きたかった…

そして2月にはNew Stage Epsodeがある。今までのモバの雨彦の変化を彩ってきたのは何もテキストとカードだけではない。演者である笠間さんによる「雨彦の歌声」の変遷はゲームだけでは決して表現できない部分のリアリティを私たちに実感させてくれる。

5thアニバーサリー合同曲「Bet Your Intuition!」で「ああ、雨彦はついに自分の歌声の魅力を自覚したんだ」と感嘆しきりだったが、この次が、SideMemoriesを超えた先にある曲がお出しされるわけである。こんなの楽しみにしなくてどうするのか。

かつ、2月同週にはバンナムフェス2ndが控えている。前年雨彦一人だった東京ドームの大舞台に、ついにLegenders全員で立つ日がやってくるのだ。

配信含め、きっとたくさんのプロデューサーが、そしてLegendersを知らない人たちが彼らを見る。

もちろん、ゲームの方もきっといろんなお仕事が来るのだろう。

 

 

欲張りになった葛之葉雨彦は一体どんな顔をするのだろう。

どんな仕事をして、どれだけ魅力的なパフォーマンスをしてくれるんだろう。

北村想楽と古論クリスはそんな雨彦を見て触発されないわけがない。きっと未知の化学反応が起きてくる。

そのすべてを見届ける事が、ここまで追いかけてきたプロデューサー として為すべきことなんだろうなあと決意を新たにしたのでした。おわり。