水底ガムシロップ

世の中わかんないことばっかりだ

【SideM】いいね7000超を記録した北村想楽イベント雑誌「好奇心は猫を殺す」を読む

アイドルマスターSideM Mobage版がサービス終了してぼちぼち2か月になる。
まあその、色々あったはあったと思うのだけど、モバエムのWebオンリーがあるということなのでなんか一個くらい出し物をしたいねと思ったので、

モバエムイベント雑誌いいね数累計7000超を獲得した伝説の雑誌「好奇心は猫を殺す」を読み下してみようと思う。

※個人の解釈です

※書いている人は二次創作をたしなみますが、なるべくフラットな視線で書こうとがんばっています。ご了承ください。

 

◆「好奇心は猫を殺す」概要
2018年 2月28日~3月9日まで行われたイベント「熱血のリーズナー TALK&LIVE」内で実装された北村想楽のイベント雑誌である。
イベントは年季のあるロボットアニメの主題歌をJupiterとLegendersで歌うことになり、秋葉原を各自満喫しながら見識を深めていくというもの。
当該雑誌は秋葉原散策の折の一幕だが、おおまかな流れを記すと
北村想楽が葛之葉雨彦を誘って猫耳メイド喫茶に入ったところ猫耳被ってハートマーク作らされ想楽は真っ赤雨彦はノーダメで終了」というものだ。


知らない人の方が少なそうではあるが、初見の人はきっと「何言ってんだこいつ」と思ったことだろう。
この記事の主題は、このセンセーショナル極まるストーリーが、どれだけ緻密に組まれ彼らの尊厳を壊さずに配置されたかを読み解くというものである。

こちらがその入口画面。上下のいいね回数が様子のおかしさを予感させる

 

目次

 

 

前提1:この時の北村想楽について

サイスタからふれたPたちと、あまりLegendersにかかわってこなかったPは少し驚くかもしれないが、モバエムにおける初期の北村想楽はサイスタの現在・そしてモバエム後期の彼とだいぶ環境と様子が違う。

北村想楽と、他人と大人への反抗心について
そもそもの話として、モバエムにおける北村想楽の恒常雑誌を見てみると、自分らしくいるためにアイドルになるという主題の横に
「絵が好きだった兄がいわゆる社畜になってしまい絵を描けなくなり、己を殺し凡庸な人間になってしまった彼へ多少なりとも落胆している」心情が存在している。
少し丸めた言い方になるがひいては「自分を殺してしまうような大人になりたくない」という、大人全てへの反骨心が彼の深部には灯っているように見える。
そしてもっと深いところには、自分が一人で生きていかねばならないという他人全てへの柔らかな拒絶も見え隠れするように思える。

「大人」への反骨心はユニット結成時に延焼を起こしてしまう。
両隣に来たのは同年代でも年下でもない、なんなら兄と同じ「働く大人」としてかなりの年数を過ごしてきたはずの男二人だったからだ。
モバエム初期のユニット内ボイス付き会話について、想楽との会話が剣呑な空気であることからもこれはうかがえる。

例1
葛之葉 雨彦:なあ、俺のことも詠んでみるかい?
北村 想楽:ふふっ、怖い大人は遠慮しますー。

例2
北村 想楽:究めたる、想いが故の、空回り。
古論 クリス:?…失礼、文学表現には疎いのです。


つまりモバエムの北村想楽は雨彦とクリス本人の気質以前に、大人に対する反抗心があったと考えられる。
これはしばらくコミュニケーションにおける非常に難解な壁になっていたのだが、雨彦もクリスもぐいぐい仲良くなろうというスタンスではなく
想楽を尊重し、それに寄り添い傷つけぬよう配慮し必要な時には助言をする、という途方もない技術が必要なことを平然とやってのけてしまった。

もともとビジネスライクとして他人に迷惑をかけないように、というところで表面上は何事もないように見えていたが、想楽の警戒心は少しずつ氷解していく。本当に少しずつ。
Happy Resort Weddingではクリスから「私の大切な人」というド直球かつ最大級の好意をもらった。
雨彦も想楽もここはかなり起点になっているイベントで、読んでない人がいたらぜひ読んでほしい。フルボイスだし。

そして大人だけでなく、他人すべてへの壁も少しずつ解け始める。
Happy Resort WeddingからLegendersとしては2イベントこなした後、想楽としては二度目の越境になる「Xmas Live 2017 -Side:Prelude-」において、
年下アイドルたちとの共演、そして同年代で全く違う経歴と考え方を持っている清澄九郎との交流。
自分を追い詰めてしまった想楽へ九郎がかけた言葉で、彼はひとりでいないことの意味と、大きな成長の糧を手に入れた。

この大きなイベントをこなした後というのが今回の「熱血のリーズナー TALK&LIVE」における北村想楽の心境の主軸だ。
ちなみにサイスタでの彼がそういった壁があまりないように見えるのは恐らく思考の原点になっている兄が社畜に近いとはいえ
モバエムに比べるとかなり楽しそうに仕事をこなしている状態だから、だと考えられる。
兄への忸怩たる思いがないのであれば雨彦やクリスに対しても当然態度は軟化している。この変化は実に面白いと私は思った。


②雨彦との探り合い
前述したとおり大人への反抗心を持つ想楽だが、その反抗心を燃やす相手の一人に葛之葉雨彦がいる。
見た目からしていかにも悪い大人の男たる彼はその実まったく悪いことをしないわけだが、その代わり飄々として本心を見せない。
なんとかして尻尾をつかもうと想楽は幾度か水面下で探りを入れている場面があるのだが、このイベントの前にあった「315MAGAZINE 乗馬紳士なアイドルたち」「ART COLLECTION LIVE」の増刊号にて
その一端を見るような場面があった。
前者は犬が苦手?な雨彦が牧場犬に懐かれて困っているところを隠れて見ていた北村に預ける事で借りを作るような描写が、
後者は雨彦のスケッチをした際狐耳をつけた彼を描き、雨彦に「隠し損ねたかな」と言わせる場面があった。

これは乗馬の増刊号。カード絵では一切見ないいい表情をしている

反抗心の氷解とともに、そもそも人間同士としての距離を少しずつ縮めている場面があったことで、
イベント当時の北村想楽はアイドルとしてデビューした当時に比べれば、他人に対しても、葛之葉雨彦本人に対しても、そこそこ警戒心が薄れていたのではと推察できる。


前提2:この時の葛之葉雨彦について

前提1が長かったのでここの記載がどうなるかを不安がる人もいると思うが、
当時の雨彦についてはほとんど説明する必要がない。なぜならモバエムにおけるこの時の雨彦はクリスや想楽と違って成長や変化が見られない段階だからだ。
サイスタの状況とほとんど同じだと思ってもらってもいいと思う。彼が揺り動かされ変わっていくのはもっと先の話。

 

「好奇心は猫を殺す」を読む

前提条件はここまで。本題に入ろう。

 

初見の方はぜひ何らかの方法でこの雑誌を読んでから記事に戻ってきてほしい。

現時点で見れるものは公式からのものではなく有志がアップしたものしかないためこちらを紹介するが、公式からのアーカイブ提供があり次第差し替える予定。お願いだからよろしくお願いしますね公式さん。

 

(2023/12/12追記)

ずいぶん前になってしまうが公式にアーカイブが追加されたのでリンクを貼っておく。実装までの間youtubeに動画をアップしてくれた有志の方、ありがとうございました。

 

asobistory.asobistore.jp

 

 

カードやイベントストーリーの情報を総合すると、クリスと冬馬がプラモショップで和気藹々、北斗と翔太がゲームセンターへ行ったように見える。
残されたのは雨彦と想楽。

 

前述の通り北村はユニットメンバー、特に雨彦についてはかなり警戒していた節があったはずだがここではどうもそれが薄れている様子がある。というか、どちらかというと気を抜いているような感じもする。
前イベントであるクリスマスライブの折にあった他ユニットメンバーとの交流と成長、他人に助けてもらうことの意味を知った事、そしてその前にあったウェディングでの決意、乗馬とアーコレで雨彦を出し抜いた優越感。

そして秋葉原という、どう考えても雨彦は不慣れで想楽は(ひけらかしてはいないものの)そこそこ親近感のあるこの土地も相まって、この表情になっているのかもしれない。

 

「Cat Maid カフェ」つまり猫耳メイドカフェを発見する想楽。


直接関係ない話だが、この猫耳メイドカフェは恐らく彩の華村翔真さんの行きつけのメイドカフェだ。
【オフショット】のチェンジ後で隼人・恭二と一緒に猫耳を付けておいしくな~れ♡している様子が見えるので恐らくそう。この後出てくるメイドさんも当該カードに映り込んでいるメイドさんと笑顔が似ているので、たぶん。系列店かもしれないけど。
サイスタでも去年の一彩合彩のイベント時に彩メンバーたちが訪れていて、なんとフォトスポットに背景もある。

 

この顔である。北村は他のアイドルであればモノローグでしゃべって説明しそうなところを喋らない事が時々ある。これはその最たる例だ。

猫耳メイド喫茶という異端の地に自分と違って何も知らない雨彦を連れ込めば一泡吹かせられるのではないか、という、まあ、結末と普段の思慮深さから思えばだいぶ短絡的な思考である。ここからも気を緩めていることというか油断というか、とにかくそういうものが感じ取れる。

 

引きずり込もうとする言い訳も落ち着いてみるとだいぶ怪しい気がするが、雨彦は特にそれを指摘しない。

 

もう悪戯をやりきり勝利を確信している顔だ。

ちなみにここから2コマ前まで雨彦の表情は一切見えない。

後々の展開を考えるとここでの雨彦は「罠に気が付いていないフリをしていた」または「本当に興味本位だけで特に何も考えていなかった」の二択があるわけだが、

私としては前者かなあ…と思っている。

あの雨彦が必要以上にニコニコしている想楽に対して一切気が付かないとは思えないし、入った先にあるイベントもきっと予見できていたか、起きるかもしれないし平気かもしれないがまあどっちでも面白いしいいか…のどちらかだったのではないかと思う。

想楽がこのままでは自業自得とはいえ自爆してえらいことになるかも、という場面で雨彦があえて警告せず黙ってそれに乗っかったというのが非常に私は好きだった。

雨彦は悪人面ではあるが悪いことはできて悪戯まで、というくらいのド善人なので基本は自分に対して悪戯してくる人間であれちゃんと警告してくれる気がするのだが、

この時の想楽の様子がいつもよりかなり警戒心が薄れていて、それが見えていたとしたら雨彦はだいぶ嬉しかったんじゃなかろうか…とも。

そもそもが世話好きで、これは当時一切わかっていなかった事だけど年の離れた妹がいる30の男が、11年下の一生懸命こちらと対等であろうと生きる青年のことを好意とかそういうことでなく仲間としていとおしく思っていないわけがないと私は思っていて、

常々MAX警戒度だった想楽がこちらに悪戯しようとしてきている、しかもそのまま行ったら自爆しかねない事をいつもの想楽ならわかりそうなはずなのに、気を緩めているのかまるでわかっていなさそう…という状況であったら、どうだろうか。

自分に対しての警戒をある程度(無自覚とはいえ)解いてくれている、という一点のみでも雨彦にとってはうれしいイベントだったのではと思う。

でもそこで想楽の自爆を警告せずに見過ごしたところは乗馬やアーコレで積まれてた借りがあったからなのかもなあ…とも。雨彦なりの、一段階上がったコミュニケーションだったのかもしれない。

 

 

そうはならんやろ。なっとるやろがい。
ここが北村想楽の真骨頂といえるコマ。

今は触れ回る人々もいるのでそうはならないが、何も事前知識なくこれを読み進めていたイベント当日のわたしはこの前のコマまでで「二人であっさりおいしくな~れして雨彦さん似合わないし動じないねーお前さんこそうまいことできるもんじゃないかみたいな会話して終わるんかな」と思っていた。というか想楽はそういうことに動じないものだとばかり思っていた。

突きつけられた現実はこれだ。見たことも無いくらい顔を真っ赤にしてぐちゃぐちゃのハートマークを懸命に作ってかろうじて笑顔を保っている。

北村想楽の魅力の一つは、動向を見ている人間の予測と異なる反応を返してくるところだ。そのうち予想よりもしたたかな言動をするケースももちろんあったが、クリスマス2017の際の自傷するかのような発言と今回のこの赤面のような予想と違った弱さを見せてくるケースがあるのがすごい。非常に雑な言葉で言うと「人間だな」と痛感した。

 

何回見てもすごい絵面だ。

「変わったまじないだな」という雨彦の無知っぷりというか年相応な場違いさを表すセリフもそうだが、

それに対し「アキバ流のおまじないで~す」と素早く切り返すメイドさんがコミュニケーション能力の鬼すぎて泣いてしまった。

様々な場面で雨彦同様他人を翻弄する側に立つことが多かった想楽が完璧なツッコミに回る非常に貴重な場面。

 

雨彦の無知を突いて連れてきたら立場が一気に逆転してしまった想楽が「慣れてるみたいだねー」と言う。慣れてないって踏んで連れてきたんだろお前。

全然関係ないがこのコマで映っているオムライスのメニュー名はサイスタの一彩合彩のイベントストーリーから、「ぴゅあふるオムライス」である可能性が高い。

 

無情にもトドメを刺してくる雨彦。

この「にまっ」という効果音は想楽がととのった際よく使われるものだ。完全に意趣返し。猫耳もしっかりしてるシュールな絵面のはずなのに絶望的なまでに顔がいい。

でもやっぱりしてやったりの感情とともに、普通に楽しんでいるようにも見える。

 

あれだけ売り言葉に買い言葉したりなんだりしていた北村想楽の完全敗北というか自爆が猫耳メイド喫茶になるとはだれが思っただろうか。本人も思わなかっただろう。サイスタの想楽が聞いたら卒倒しそうだ。

 

最後のコマ。どんなに恥じらいがあっても目の前のおいしそうなオムライスは食べている。したたか。

そしてここでのポイントはクリスに頼ろうとしている事だ。これも本人は無自覚っぽいが、ビジネスライクな関係でいようとしていた想楽が自らクリスに助けを求めているのがこれまた気を許していることのあらわれでいとおしい。

想楽からすると、メイド喫茶で真っ赤になっていたところをよりにもよって一番見られたくないであろう雨彦に見られてしまったわけだ。しかもその雨彦をメイド喫茶に引き込んだのは自分なので完璧に自爆。泣きっ面に蜂どころではない。

 

全然関係ないけど雨彦のあの声で「キュンキュンナポリタン」とか発してる事実があるの意味わかんないな。

 

最後のコマは全イベント共通のFin.の文字だけなので、解説はここまで。

 

 

イベント本編での言及について

見返すとそこそこ大事件だった秋葉原猫耳メイド喫茶事案ではあるが、面白いのはこのイベントストーリーの本編にこの話は一切出てこない点だ。

情報としては雨彦のカード台詞で「メイド喫茶?…いいぜ、行ってみよう」があるくらいで、これも誰に言われているかは当該雑誌を読まないとわからない。

で、起きた事も起きた事、雨彦からすれば面白半分にいくらでも触れ回ることができただろうにその描写は見えない。

メタ視点的にもかなりセンセーショナルなイベントであったはずなのにそれをイベントの目玉にするどころか、言及すらもしていない。雑誌を読まないと知られないクローズドな事象にとどめている。

このことからすると、おそらく雨彦は「秘密」として誰にも話していないし、公式もそれを尊重しているのでは…と思う。

こういったセンセーショナルな事象はとかく噂として伝播して揶揄されるネタになりがちなのだが、公式からそういったマイナスな追撃はなかった。そう、マイナスな追撃はなかったのだ。

 

後日談(Magical Halloween Festival2021)

そこから2年ほど後のハロウィン選抜で雨彦は狼男のコスプレをした。狼耳と爪と尻尾で。狐と間違えられたらしい。ニコ

その次の年、2021年のハロウィン。

なんと想楽は雨彦とお揃いのコスプレを披露してきた。

 

雨彦だけがケモ耳のカチューシャをするのはまだよかったが、

「想楽が」「雨彦とお揃いの」「ケモ耳カチューシャをした」事実はちょっとなんか深読みをしてしまう気がする。しかもこの時の想楽は柄にもなくテンションが高く、セリフにも「がおーがおー!」と珍しくエクスクラメーションマークまで入っている。

 

あれだけ真っ赤になってしまっていた因縁の耳カチューシャで、数年たってハートマークも臆せず作れるようになったし(バレンタインライブ2019参照)、耳カチューシャして動物の掛け声くらい恥ずかしがらずにできますけどー?という意地にも見える。雨彦はその場にはいないから、あの事件を知っている限られた人間にだけ、様子の違う彼の理由は推し量れるようになっているのではないだろうか。

ここでも「好奇心は猫を殺す」の事象までおおっぴらにすることなく、あくまでも連想ゲームのひとつとして可能性にとどめている、というのが非常に細やかな配慮だなと思った。

 

 

おわりに

モバエムが終わってしまったことでLegendersPとして悔恨が残っていないわけでは当然ない。悔恨はありすぎてまともな記事がかけないくらいだった。

でも、ないもんを嘆いても仕方がないしこれからサイスタの彼らがどうやって成長していくのかはすごく興味があるので、しずしず見守っていきたいなと思っている。

でも多分まだモバについてもつらつら吐き出したいこともあるので、その辺も思い出したらまた記事にしたい。どっちも好きです。みんなも無理しないで楽しめるところを楽しんでくれたらと思います。