水底ガムシロップ

世の中わかんないことばっかりだ

【映画を見た】パンズ・ラビリンス

「シェイプオブウォーター」が世間を席捲していた頃、ちょうどアマゾンプライムにパンズラビリンスが見れるようになった報が入ったので見た。

 

身も蓋もない感想を言うと、まるごと好きと言える話ではなかった。

主人公の養父たる軍人の苛烈なゲリラ掃討作戦、息の詰まるような圧迫感、そして生々しい傷口の描写。

まあその、私がもともとグロ耐性が皆無なのでしょうがないのだが、傷口を縫うシーンなんかは喉から鶏を絞めたような声が出たのでしっかり見れなかった。

つらい描写が多い中で私が書き残したかったのは言うまでもなく謎の存在「パン」と異世界の情景と、そこに触れる少女の話である。

 

パンは実に不安定な言動をしている。うやうやしく少女を王女の生まれ変わりともてなし、彼女に希望の道を示す。かと思えば自分の言う通りに動かなかっただけで口調も荒くなりお前に資格はないと突き飛ばす。

キャラクターを作った人が監督なのかそうでないのかわからないが、「ヒトと同系統の姿をしたヒトならざるもの」としてそれなりスタンダードに存在する「言動の芯のなさ」が非常にうまく描かれていて、何しろ私はこういう姿は似てるけど中身が理解不能な人外、というのが大好物なのでヒャーーー!!!!とはしゃいでいた。

 

もう一人忘れてはならないのがペイルマンだ。このシーンはツイッターでだいたい同じような趣味嗜好性癖を持ったフォロワーがみんな絶賛していたので実は名前だけ知っていた。

ペイルマンのデザインはいささか先進的すぎて子供の頃に見てしまったら三日三晩夢に出てたと思う。大人になるとこういった刺激の強いものに耐性ができるのが利点だなと最近わかってきた。

デザインはおろか、その行動理念も実にシステマチックで無感情でグッドどころではなかった。

黄金さながらの御馳走を前に、獲物がルールを破るまで微動だにしない。

ルールを破った獲物が出てはじめてそれを捕えようとする。そこに人間が解読できる感情と変化は存在しない。最高かよ。

 

それから森の情景が非常にファンタジックで美しかった。

綿のようなふわふわしたものが光を浴びてきらめきながら風に吹かれる様はイラストでしか見たことのない妖精の森のそれで、再現できるんだ…と感心しきりだった。

監督の趣味なのか虫が「虫です!!!!!」とかなり強い主張をする外観だったので興奮した気持ちはスン…と消えた。

 

なんだかんだ楽しんでみることはできたが、次見るときはフルでは見れないと思う。

苦手なものがあるのはなかなか損な人生だなと思った。