唐突な気紛れを起こしてSerial experiments Lainを全話見た。
感想を書こうと思うのだが、いかんせん話の本筋は数度見るか資料集を眺めないと語りつくせないという事で、そのあたりは専門家と未来の自分に任せることとし、貴重な一周目が終わった時点での感想をつらつらしていく。
このアニメは人間が如何様な要素に対し「不快」を感じるかをよく熟知していたと思う。
劇中はBGMが殆どない。玲音の通学路は常に人っ子ひとり車も通っていない。
ただただ電柱と電線がひしめく空に耳障りな電子音が響く。
日常のありふれた風景も多少何かを削っただけでここまで不安になるのかと感心した。実際感心よりは不安感が強かった。
人の表情についても見事なくらい「人間らしさ」が欠けていた。
これは絵が上手い下手どうのの話ではなく、おそらくわざと歪にしている。(違ったらごめん)
一見無表情に見えるがよく見ると不安になる。何もいいことがない。
だがその無機質な表情こそがこの作品をこの作品たらしめているとも思った。
終盤、体中をコードで繋いでいた玲音は別の生き物のようだった。
神々しくさえ見えた。正直そのまま溺れてしまうのではと心配になった。
最終的に世界から存在が抹消されて終わり、という話は近年かなり増えたが、この放送年代でやってのけたのは非常に先進的だったのではなかろうか。
OPの無機質かつ歪な表情をした現実の玲音と、PCの中で息を呑むくらい儚い表情をするレインの対比は印象に残りやすく、独創的な展開も相まって有名になるのも頷ける出来栄えだった。音源もiTunesにあったから買ってしまった。
物語の妙を抜きにしても独特の要素が山盛りなので、見て損はないと思う。
ただ、世界観に潜り込んでしまうタイプの人だと精神的にしんどい部分があるので元気な時に見るのをお勧めする。
私は元気200パーセントの時にこの作品を見て50パーセントくらいまで出力が落ちた。それくらい生気を吸い取ってくる稀有な作品なのだ。