【ゲームをした】LIMBO
昔のメモが出てきたので供養する。実際にクリアしたのは2年半前。
Monument Valleyをプレイした後、すっかり絵本系スマホゲーに魅了されたので他にも何かないかとPlayストアを漁っていた時に出会ったのがLIMBOである。
厳密にいうとスマホ発ではなくXBox360で配信されたのが最初なのでコンセプトが微妙に違う気もするが、それはそれ。モノクロで映る美しい情景に惹き込まれ、体験版をプレイしてみることにした。
が、ここで致命的な問題が発覚する。私はアクションゲームとゴア表現が死ぬほど苦手だった。
スワイプとタップという見えないボタン操作は苦行もいいところで、結局体験版は「操作ができない」という理由で最後まで行けなかった。バカである。
その後無事にVita版がある事を知りなんとかボタン操作で2か月くらいかけてクリアできたのだが、自分で言うのも難だがアクションゲームとゴア耐性がかなり伸びた2か月だったように思う。成長をくれるゲームは素晴らしい。
ゲームをクリアした感想は、一言ではちょっと言えないので好きなところでもつらつら書いていこうと思う。
LIMBOは和訳すると「辺獄」、常世と幽世の狭間のことを指すという。
ゲームに付された言葉はただ一つ、「運命に逆らい、妹を探して少年はLIMBOの世界に足を踏み入れる」のみ。
このゲームの特徴は繊細かつ重厚な空気感と、ゲーム内にあるあらゆるモノに対する徹底的なリアルさと、状況だけが作り出す非現実の美しい対比だ。
木々の木漏れ日、雨に穿たれるパイプ、土の地面を蹴った時に飛ぶ小石、主人公の息遣い。イヤホンをしてプレイしないと聞き取れないような環境音までこだわりぬいて作られている。やるなら絶対イヤホンしてほしい。
難しいことがよくわからないので伝わらないと思うのだが、物理法則の再現度もちょっと異常なくらいリアルなのだ。実際それを使わないとクリアできないギミックも存在する。
特に感動したのはトロッコが壁などにぶつかった時の跳ね返り。
この跳ね返りが左側から力を入れた時と右側から入れた時で微妙に異なる。やった人はわかるかもしれないが、私はスイッチが入ると電気が走ってギャーなギミックで散々詰まった挙句この現象に気が付いて衝撃を受けたものである。
忘れてはいけないのがいわゆるゴア表現だ。LIMBOは基本的に全て影絵なので直接切り口が見えたりしない分豪快に首を境にスパーンと分かれたり粉々になったりやりたい放題している。いい迷惑である。製作者の「影絵だし何しても大丈夫だよね!」という気概が強く感じられた。何も大丈夫じゃねえわ。
ゴア耐性がないこの身でもひしひしと感じたのは製作者がそういったご趣味を高じておられるということで、特に回転ノコギリと機銃のゾーンは非常に丁寧な作りをしていて事故死が絶えなかったしMPもガンガン削れた。
普通、主人公がゲームオーバーになった際に入る演出というのはシンプルに死んだことを伝えるだけで、画面の切り替えも早々に行われるものだ。
ところがLIMBOは、銃弾一発ノコギリ一裂きで死んでしまうのにそのあと丹念にミンチにしていく描写まできっちりと映し切ってからリトライに遷移するのだ。悪質すぎる。おまけに大体何回か死なないとダメなところなのでわかるのだが、毎回入る角度が違うためミンチのされ方が違うのである。なんでそういうところまでこだわったのか。
後半よく主人公の体が八つ裂きにされた状態で重力反転が起きたりするとそれはもう惨劇さながらの画面が展開されて何回か心が傷つくパターンがあった。
ゴア表現で心が傷つくのはもちろんなのだが、それに拍車をかけているのが主人公を取り巻く「殺害意志」と「感情の欠如」だ。
主人公は妹を助けたいという意志がある事しかわかっていない。
そこにどういった感情があり、どんな気持ちでこのLIMBOの世界に臨んでいるのかは一切不明なのだ。
そして逐次出現する主人公を待ち構える罠、巨大な蜘蛛、そしてヒトらしき生き物。
走る世界全てが主人公を殺そうとしてくる。何故か?
その答えは示されない。彼らはただただこちらを見るなりトラップを仕掛け、炎を使い、プレス機を作動させ、あらゆる手段でこちらを殺しに来る。
主人公も主人公で、襲い来る蜘蛛に対し岩を落とし、崖から突き落とし、挙句の果てに達磨になった蜘蛛を針山に落として橋替わりにするなどおよそ少年のそれとは思えぬ行動を強いられる。正直一番心が傷ついたのはどのゴア表現よりも自分の手で蜘蛛を殺す羽目になったこの場面だった。
起こる出来事、そこにあるはずの感情が何も説明されぬまま終わる所にこのゲームの独特の魅力がある。
感情の見えないまま巡る地獄の世界、それが「LIMBO」の世界なんだと思う。
癖は強いが、世界に没入するゲームとしては非常に優秀なので、もし興味があれば是非体験版からプレイしてほしい。