水底ガムシロップ

世の中わかんないことばっかりだ

【映画を見た】ミスト

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(公式じゃない。すみません)

 

心揺さぶるコンテンツというのは滋養強壮にいい。

でも前の晩プロメアに脳を焼かれ、起き抜けにチェンソーマンの単行本未収録分本誌を一気買いして大後悔時代(※めちゃくちゃ作品としては面白いし評価しています)していた数時間後にこれを見たのは流石にちゃんぽんにも程があるんじゃないかなあとは思った。

勧めてくれたフォロワー、新鮮な悲鳴をキャッキャしてたフォロワー、早急に推しのSSRが突如実装されて狂ってくれ。

 

事前知識は「後味が悪い」だけ。

ある程度覚悟はできた方だったと思う。

 

サスペンスやホラーというか、人がいっぱい死ぬ映画というのにあまり触れてこなかったせいもあり、そういう怖い作品の製作者はぼんやり人間が嫌いな人が多いのかなあくらいしか思ったことが無かったのだが、この「ミスト」を作った人たちは多分逆で「追い詰められた人間ってこんな愚かムーブしちゃうんだよね~人間のそゆとこサイコ~!!!」というタイプなんだろうなあと思った。「人間嫌い!滅ぼしちゃう!」ではない。

 

 

散々アマゾンヌのレビューとかで言われている事ではあるが見返してみれば主人公の取った行動はことごとく悪手だった。

宗教おばさんを差し置いて「主人公こそカルト宗教の教祖」というレビューもあったが、それはちょっとお門違いというか、主人公を悪者扱いするのは違うんじゃないか?とも思った。

結果的に、この「ミスト」世界の時間の流れを俯瞰してみればそうなのかもしれないが、主人公が「悪人」だったわけではない。

というかこの映画に明確な「悪人」は存在しない。宗教おばさんだってちょっと怪しいが悪を為そうとしてなしているわけではない。ただただ環境が人間をあそこまでの「悪」たらしめ、他を殺し自分を生かそうとしただけなのだ。最初に他人頼りに外に出ようとした母親も、主人公とそこそこ不仲だったせいで外に出てしまった男性も、みんなみんな別に悪い人ではなかった。超いい人かといわれると口を噤む程度の、良くも悪くも普通の人たちだった。だからこそ感想には善悪の話が跋扈しがちなのかもしれない。

 

こういった映像作品における得難い体験というのはやはり、運命の岐路に立った人間とその末路をスクリーン越しに俯瞰できる点だ。こと「ミスト」においてはラストシーンでそれが鋭角で叩きつけられるため、感情を大きく動かされる視聴者が多いのも頷ける。

そして主人公をはじめとする霧に襲われた人々が取った行動に対し正誤を問う視聴者を見て製作者側が「やっぱそういうので正しいとか正しくないとか自分の物差しで決めようとしちゃうよね~!!!!人間のそういう傲慢なトコほんとサイコ~!!!!!!」と余計にフィーバーしていたのでは、と邪推してしまう。

 

そういう推測ができるところも含めて、最高に悪趣味な映画だった。

あとこの映画比較的リアルなむしさんとかCGでできてるけどうぞうぞするタイプの羽虫系とかいっぱい出てくるんですけど、予告でちょっとだけでもいいからいるよって言ってほしかった。ガラスにむしさんがバン!するところ自室でかなりデカめな声出ました。

 

 

 

【映画を見た】プロメア

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わりとセンシティブな理由で映画公開時に行けていなかったプロメア。

この度プライムの枠に入っていたので、今こそ!と思い見た。

めっちゃ面白かった~!映画館見に行けばよかったかもしれない。

 

見ていて一番唸ったのはリオ・フォーティアの変化だった。

リオはバーニッシュとしていわば迫害とも言える扱いを受けつつも、その生と権利を掴もうと必死だった。茨の道を傷つきながら歩みそして死んでいく運命だと本人もきっと思っていたはずだ。

でもリオはガロに出会ってしまった。運命の転機。

傷つき続けた人間が偶然出会った人間の存在そのものに救われて人生がまるごと変わってしまうという関係性の激変と運命論、オタクなら嫌いな人間いませんね…めちゃくちゃ良かった。

月と太陽ではないんですよね。燃える星と燃え尽きそうだったところ酸素を過剰供給された星というか…お互いの光が自分の燃料になっているというか…天道輝と桜庭薫というか…たとえとして適切な単語が浮かばなかったので具体例にしたけどつまりそういう事なんですよ。プロメアのいちばんおもしろいところはここだと思った。

 

ストーリーも単純明快というか、理論は二の次感が最初から出ていたのであっそういう話じゃないんだなと脳味噌をぱっと手放せたのも良かった。

声優さんもメインどころが本業の声優さんではなく俳優さんだったのも良かった。個人的にこの起用の仕方はジブリと似た感覚があって、上手い下手どうのではなく独特の空気感が出るので結構好きだったりする。今回のお三方も聞きなれない声だったおかげでキャラクターの個性とともに飲み込むのにとてもちょうどよかった。堺雅人さんだけ堺雅人さんの声ってぱっとわかったんですけど、それはそれですげえな…と思いました。

 

ひとつあげるとすれば、むしろ脇役の声優陣が気になったくらいだった。

ガイナやトリガーの別作品に出ていた方々がこのプロメアにも出ていたのだが、ちょっとメンツがキャラともども被りすぎていてどうしてもそっちに気が向いてしまった瞬間が何度かあった。物語を邪魔しない程度ではあったのだが。

勿論メインであるガロ・リオ・クレイのキャラづくりはすごく良かったんだけど、一部の声優さんが作風に合っているのもわかるんだけど、「そこがいいんだよ!」という意見もあると思うけれど、もうちょい被らないキャラにしてほしかったな~!と思ってしまった。無念。

 

頭を空っぽにして楽しめる痛快火消しファンタジー、色彩の暴力、人間と人間の感情がぶつかる化学反応。とてもいい映画だった。

【映画を見た】シャイニング

なんと、自称ホラー苦手である。

自称というのは最近普通に海外ホラーなら一人で完走できてしまっていて段々自信が無くなってきたからだ。

人生最初のホラー映画がほぼ無理矢理見せられた「エクソシスト」だったのが間違っていた気しかしないのだが、とにかくホラーというジャンルは避けて通ってきた人生だった。

だが人間年を取ると痛覚も鈍る。それと知識も得る。

ホラーと大別されるジャンルの中にも種々様々あり、「怖そうだけど見てみたい」と思うような作品も出てきた。

おまけにこの動画配信大発達時代だ。ピカピカに明るい昼間・画面を隠せるぬいぐるみ・いつでも止められる一時停止ボタン・喋らずに実況して気を紛らわせるTwitter。時代はホラー苦手を克服せよと仰せだ。これを逃す手はない。ので見た。

 

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ミーム汚染されているジャックニコルソンの絵面しか知らない状態で鑑賞したのだが、非常に面白かった。そんなの当たり前なのだが。

 

そも、この映画に出てくるホラー要素というのはなんやかんやあって人を狂気に誘ってくるオーバールック・ホテルそのものだ。

そこにあてられたのをきっかけに人間から狂気の塊へ変貌していくジャックと、ホテルとジャック・生まれ持ったシャイニングに翻弄されるダニーと周り全部から追い込まれるウェンディの様子は噂通りおぞましい程の不安と恐怖に満ちていた。

 

元々ジャックがあまり人間として出来ているタイプではない、という設定と描写を入れてきているのがスタンリー・キューブリックだな~!と思った。時計じかけのオレンジの時も思ったのだがこの人もしかして聖人君子なんてこの世には存在しないしみんな悪い側面を持って行動してるからこんな目に遭うんだよ!というスタンスなのかなあとも思った。

 

良い人が狂気に堕ちていくというのはギャップがあって見ごたえがあるけれど、

元々そんなに良い人じゃない人が最悪の狂気に染まっていくのは因果応報の観点からしてもリアリティがあったし、思考がネガティブな分狂気が回るのが早いんだろうというのも説得力があった。

 

前述の通りあまり海外ホラーには触れてこなかったのだが、この映画のホラー演出が静的というか、「カメラを回したらいる」みたいなのがあったのも印象的だった。こういうのは日本のホラー特有なのかと思っていたし、もっとドカー!バキー!キャー!みたいなのを想像していたので普通に怖かった。その静的な恐怖の与え方とジャックがウェンディたちを襲ってくるシーンはドカバキキャーどころではなく、その静と動の緩急の付け方も非常に上手いと思った。

 

この映画がホラーにもかかわらず様々な人に世代を超えて評価されるのは、きっとホテルのホラー要素だけでなく、そこにあてられた生身の人間が自ら狂気に足を踏み入れ、同じ人間を恐怖に陥れるサスペンスとしての側面があるからなのではないかと思う。

得体のしれないものというのは概して人間怖がるが、そこに影響されて変わってしまった人間は、幽霊などとは全く違うタイプの恐怖になる。

 

更にホテルの意志については謎めいた描写やファンタジーもかくやというシーンも多くあり、スタンリーお得意の絵画のような構図と美術による絵空事感が強調されることで、恐怖よりも「どういうこと?」「これからどうなるの?」の感情を強くすることができ、結果画面をちゃんと見て映画を完走することができる仕組みになっている。

ホラーの一番の難点は見たくないシーンを見ずにいる事で話の流れがわからなくなったりして結果つまんないという感想になる事だと思うので、そこが上手く対処されているというか、「怖いけど見てしまう」ものに仕上げたのは本当にすごいと思った。

 

結局最後の写真がなんだったのかとか、双子がなんだったのかとか、わからない事も多いエンディングだったけれど、私は全部解明してたらつまんないよね!というタイプなので全然気にならなかった。ウェンディとダニーが生き残ってなかったら多分こんなにポジティブな感想になっていないけど。

 

ネットでミーム汚染されていた例のシーンは映画をちゃんと見ていれば普通にめちゃくちゃ怖くて笑ってられる瞬間なんてなかったので、そのへんは安心してほしい。冷やかし目的で見ると返り討ちに遭う楽しい映画なのでみんな見よう!

 

【映画を見た】時計じかけのオレンジ

夏休みまでに自分としては面白いくらい映画を見たので、ちょいちょいつまみながらメモを残していこうと思う。

 

 

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元々随分難しい映画とは聞いており、賛否も面白い分かれ方だったので見た。

見終わった後「めっちゃ難しい映画だな…」と思った。

 

主人公が歩き、望むままの暴力と無法を働く背景はどこを切り取ってもモダンで綺麗で悪趣味極まるものだった。

これが主人公の非現実的な行動と思考とぴったりはまっていて、アニメーションもCGも使っていない、魔法もファンタジーも出てきていないのに絵空事感が凄い。だからというのかなんなのか、登場人物たちの悪趣味かつ残忍な行いもいい意味で臨場感がなかったので特に問題なく見れてしまった。

この映画の監督であるスタンリー・キューブリックの作品は他に「シャイニング」を見たのだがその映像づくりというか、映画なのに一枚の絵画としての出来を追求しまくっているようなこだわりを感じた。ここは本当にすごくて、絵空事のような悪趣味な空間をよくここまで魅力的に切り取れるな!と本気で感動していた。

 

主人公の部屋から非行少年たちのたまり場である白い施設まで、恐らく公開当時から50年近く経った今なお「わ~悪趣味!!!」と言えちゃうレベルの造形と美術とカラーリングは本当にすごい。これだけでも見る価値はある。時代を超越して「美しい」と評価されるものはもちろん価値があるだろうが、時代を超越して「悪趣味」と言わしめるものもまた評価されるべきだと私は思う。

悪趣味といえば、私は字幕版でこの作品を見たのだが訳者が死ぬほど苦労したであろう痕跡がありありと残っていて逆に面白かった。でもちゃんとナッドサッド言葉の珍妙かつどこか常識とずれた空気はちゃんと伝わってきたのですごいなあと思ったし、ちゃんと元の言語を勉強して見たらどう感じるのかも気になった。

 

外面の話ばかりで恐縮だが、これは私の頭が残念すぎて中身の内容があんまり身に入ってこなかったのもある。

主人公はその欲望の報いを受け捕まり、更生の為にこれまた悪趣味極まる実験の被検体になってしまい気が狂ってしまう流れなのだが、

更生を目的にした大人たちは主人公の事を喋って動くモルモットくらいにしか思ってなさそうだったのも大変良かったし、

大人たちから下される非道な罰を受けて泣き喚きのたうち回る主人公もとても良かった。めちゃくちゃ悪趣味だった。

 

なんというか、ほんとうに隅から隅までどこを切り取っても悪趣味なので、とびっきり質の悪いジャンクフードを食べたい時に見たいなあと思う映画だった。

悪趣味ってずっと言ってますけど私はこれ褒め言葉だと思ってるのでよろしくお願いします。

 

【映画を見た】仮面ライダーアマゾンズ 最後ノ審判

見てきた。

 

今日のうちに書いておいた方がいいと思うので感想を書いておく。

 

アマゾンズはシーズン1,2と通してヒトが大好物の人型新生物アマゾンと人間の戦いを描いてきた。

1のトラロック作戦、2で人間と同じ姿ゆえの共存の模索、さらなる狩りの実態、溶原性細胞による大規模な増殖を経て、作り出した親たる人間の手で悠と仁以外のアマゾンが狩りつくされた。

2の終わりがそれどころじゃなかったせいで映画を見た後に気が付いたのだが(多分これも脚本家的には狙っていたんだろう)、1開始時点と映画の前段階の時点でアマゾンと人間の力関係は確実に逆転した。犠牲が多すぎたのと人間側の決定的戦力がそもそもアマゾンなのでとても大手を振って勝ったとは言いづらい状況だが、逆転はしていたのだ。

恐らく橘社長や園長はいち早くこの事に気が付いていたんだろう。ビジネス的な慧眼だと思う。そこだけは素直にめちゃくちゃすごいと思う。

逆転した力関係において、アマゾンを畜産として活用し食料難問題を解決に導く。なんでやねん。1の死人リサイクルの頃から思っていたがこの人は商魂がたくましすぎる。たくましすぎる上に自分以外を人間だと思っていないクチなのでああいう非人道的なビジネスを思いついてしまうんだろう。アマゾンズの世界を畜生道たらしめている原因の一つは確実にこいつだと思った。この人に限った話ではないが、悪辣な事をする経営陣程いいことしかしていないと確信しているのは一体なんなのか。奴らに対してはわりと苦しんで死んで欲しい。

 

量産された家畜アマゾンは野菜と穀物だけで丁寧に育てられる。しかもそのアマゾン細胞はあろうことか鷹山仁を元に生み出しているときた。全てのアマゾンを生み出した元凶であり、アマゾンを全て殺そうとする仁がアマゾンを大量生産する媒介になる展開はいくらなんでも酷すぎた。しかもそれが超~~読みやすい伏線というか暗示というか顔伏せで提示されたのが確信犯すぎる。そういう容赦のないところが、とてもアマゾンズらしくて最高だと思った。

 

悠が最初に家畜アマゾンたちを助けに来たシーンは個人的に一番ずっしり心に響いた。人間のエゴで生み出された命を人として扱わない事に憤る悠に対し、「それが私たちの使命」と自我を完全に捨て、死を受け入れているアマゾンたち。生きたいという欲を持たず、誰かの為に死ぬことを望む者の命を救うことは果たして正義なのか?それは救うもののエゴであり、悠の言う「助ける」に値するのか?

特撮の抱える命題の一つ、「誰かを助ける事」の定義に抉り込むよいシーンだった。

 

例の急転直下シーンだが、一緒に見た人が「とにかく肉の咀嚼音が気持ち悪い」と評していた。アマゾンズ全体に言える気がするのだが、この作品の食事の、特に肉を使用したものは「命をエゴで刈り取った」事をことさらに強調してくる傾向にある。だから咀嚼音もアマゾンが生きたまま人間の首筋を齧る時の音を彷彿とさせるし、見た目も我々人間からはおいしそうに映らない。食べている人も不快な笑顔を浮かべている。そのあたりの描写は相変わらず見事だった。

 

あとゴア描写。2でブレーキが爆破されて時速3000kmになった靖子に市中引き回しされた私だったが、冒頭の「アマゾンは残り二体」発言で「あっ、じゃあ捕食シーンとかそういうやつ無いね!よかった~」と信じ込んでいなければもう少し画面を見れたかもしれないなあ、くらいゴア描写もちゃんとあった。純粋な大人を騙すのもいい加減にしてほしい。私の安心をかえして。

これから見に行く人がここを見るとは思わないが、2期ですら見せなかった断面的サムシングが見えるシーンがあるので苦手な人はちゃんと目をつぶる用意をしていってほしい。身を護ることを優先する勇気を持とう。私は趣味を優先してダメージを負いました。

あと敵の、武器。散弾銃に電動ノコギリ。出てきた瞬間「馬鹿野郎何考えてんだ」って思った。実際凄かった。間違いなくニチアサでは一生できない戦闘スタイルだった。考えた人はマリアナ海溝より深く反省してほしい。

 

それから4C。私は元から黒崎さんが大好きだったのだがあの独特の戦闘スタイルがことさらかっこよく描き出されていてもうそこだけで100点中31527369点だった。札守さんが札守ムーブするたびに加点が止まらなかった。

散弾銃を片手で撃つあの仕草に黒崎武の全てが詰まっている。駆除班に助けられたシーンからアマゾンにゼロ距離で攻撃し続けるシーンまでなら何度だって見たい(前後が辛すぎるので実際見れない)

 

このまま書いてると内容全部書きそうなのでまとめて言うと全部よかったのでアマゾンズ2期までを楽しめた人なら見に行って損はしないと思う。ほんと。

 

 

 

 

【映画を見た】パンズ・ラビリンス

「シェイプオブウォーター」が世間を席捲していた頃、ちょうどアマゾンプライムにパンズラビリンスが見れるようになった報が入ったので見た。

 

身も蓋もない感想を言うと、まるごと好きと言える話ではなかった。

主人公の養父たる軍人の苛烈なゲリラ掃討作戦、息の詰まるような圧迫感、そして生々しい傷口の描写。

まあその、私がもともとグロ耐性が皆無なのでしょうがないのだが、傷口を縫うシーンなんかは喉から鶏を絞めたような声が出たのでしっかり見れなかった。

つらい描写が多い中で私が書き残したかったのは言うまでもなく謎の存在「パン」と異世界の情景と、そこに触れる少女の話である。

 

パンは実に不安定な言動をしている。うやうやしく少女を王女の生まれ変わりともてなし、彼女に希望の道を示す。かと思えば自分の言う通りに動かなかっただけで口調も荒くなりお前に資格はないと突き飛ばす。

キャラクターを作った人が監督なのかそうでないのかわからないが、「ヒトと同系統の姿をしたヒトならざるもの」としてそれなりスタンダードに存在する「言動の芯のなさ」が非常にうまく描かれていて、何しろ私はこういう姿は似てるけど中身が理解不能な人外、というのが大好物なのでヒャーーー!!!!とはしゃいでいた。

 

もう一人忘れてはならないのがペイルマンだ。このシーンはツイッターでだいたい同じような趣味嗜好性癖を持ったフォロワーがみんな絶賛していたので実は名前だけ知っていた。

ペイルマンのデザインはいささか先進的すぎて子供の頃に見てしまったら三日三晩夢に出てたと思う。大人になるとこういった刺激の強いものに耐性ができるのが利点だなと最近わかってきた。

デザインはおろか、その行動理念も実にシステマチックで無感情でグッドどころではなかった。

黄金さながらの御馳走を前に、獲物がルールを破るまで微動だにしない。

ルールを破った獲物が出てはじめてそれを捕えようとする。そこに人間が解読できる感情と変化は存在しない。最高かよ。

 

それから森の情景が非常にファンタジックで美しかった。

綿のようなふわふわしたものが光を浴びてきらめきながら風に吹かれる様はイラストでしか見たことのない妖精の森のそれで、再現できるんだ…と感心しきりだった。

監督の趣味なのか虫が「虫です!!!!!」とかなり強い主張をする外観だったので興奮した気持ちはスン…と消えた。

 

なんだかんだ楽しんでみることはできたが、次見るときはフルでは見れないと思う。

苦手なものがあるのはなかなか損な人生だなと思った。